NEARセンター長挨拶


 NEARセンター(北東アジア地域研究センター)は、島根県立大学が開学した2000年に創設され、今年で16年目を迎えました。この間<北東アジア学創成>を目標に掲げ、北東アジア研究の拠点構築を目指して鋭意努力して参りましたが、いよいよ来年度からスタートする人間文化研究機構(NIHU)主催の地域研究〔北東アジア地域研究〕の研究拠点の一つとして選定され、5年間の大型共同研究がスタートします。この研究プロジェクトは、国内の研究機関をネットワークでつなぐだけでなく、広く海外の研究機関とも連携しながら、北東アジア地域研究の最前線を構築しようとする意欲的なものであり、本センターがこれまで培って来た研究成果が評価されたものと自負しています。
 本
センター研究員は、朝鮮半島、中国、モンゴル、ロシア、日本などを研究対象とし、専門も政治学、経済学、歴史学、国際関係、思想史など多様な領域にまたがっていますが、さまざまな専門領域からの知見を共有かつ刺激し合いながら、「超域」というグローバルな視点からの北東アジア地域研究に取り組んでいます。また、さまざまな研究会を主催しており、「北東アジア研究会」、「日韓・日朝交流史研究会」、「西周研究会」等の研究会活動を通じて内外の優れた研究者をお招きし、各研究員は学問分野の垣根を越えて切磋琢磨しています。
 また、国内外の研究機関との学術交流も積極的に推進しており、日本の東北大学東北アジア研究センター、富山大学極東地域研究センター、中国の北京大学国際関係学院、復旦大学国際関係学院、東北師範大学東亜文明研究中心、韓国の蔚山大学校、啓明大学校、ロシアのイルクーツク大学、ロシア海洋国立大学、モンゴルのモンゴル国立科学大学等、多くの研究機関とシンポジウムを開催し、数多くの研究成果を積み重ねています。
 北東アジア地域は、文化的・民族的・政治的多様性を抱え、複雑な歴史が絡み合い、領土問題や経済協力を始めとする多くの不安定要因を内包している地域です。しかし、北東アジア地域の安定と平和、そして、真の相互信頼関係を構築するためには、その時々の政治的動きに左右されることなく、より広く長い視野から北東アジア地域をとらえ、この地域の過去を検討し、現在の苦悩や難題を共有して、今後の可能性を展望していくことが求められています。そして、それこそが北東アジア地域を研究対象とする本センターの重要な使命であります。
 同時に、島根県という辺境の地に立地しているがゆえの使命として、地域の課題を国際的な視野から展望し、北東アジア地域との共存共栄を探求しています。特筆すべきは、本学大学院との連携に積極的に取り組み、優秀な大学院生(留学生を含む)を本センター
准研究員に任命して研究活動をサポートするなど、北東アジア地域の研究者・専門家の養成に力を入れています。また、今年で10周年を迎えた「NEARセンター市民研究員制度」は、全国に先駆けて地域と大学研究機関を結ぶ取り組みであり、市民研究員と大学院生が共同で研究課題に取り組み、両者のコラボレーションによって毎年ユニークな研究成果が生まれています。
 最後に、本センターの特筆すべき取り組みとして、<北東アジア学創成シリーズ>全7巻の刊行を2012年より開始しました。今年は、第1巻宇野重昭著『北東アジア学への道』(国際書院、2012年)に続き、2巻福原裕二著『北東アジアと朝鮮半島研究』が上梓されました。国内外から北東アジア地域に注目が集まる中、本センターの果たすべき役割はますます大きくなっていることを実感しています。みなさまからのご期待に添えるよう、本センター研究員一同こぞって研究に邁進する所存です。忌憚のないご意見やご要望をお待ちしております。

                  
 島根県立大学北東アジア地域研究センター長
井上 厚史