私のオススメ本

第203回 自分で考え、行動する力を身につけたい人にオススメ

おススメ本
  松江キャンパス 図書館職員 池田理絵
  私のオススメ
  『二番目の悪者』
   
林木林著
   庄野ナホコ絵
   小さい書房 2014年11月発行

 真っ赤な背景に、赤ワインを手に微笑むライオン。さらにはタイトルに含まれる「悪者」の文字や「考えない、行動しない、という罪」という一文。表紙がとても印象的なこちらの絵本は、動物たちの王国の物語です。
 主人公は表紙に描かれた金のライオン。このライオンは美しい金色のたてがみを持ち、お金持ちで、自分が誰よりも1番だと考える自信家でした。ある日、この国では国民によって新しい王様を決めることになり、金のライオンは絶対に自分が王に選ばれる、自分こそが王にふさわしいと思っていました。
 しかし動物たちの間では、街外れに住む、親切で心優しい銀のライオンが新しい王様候補にあがっていました。この噂を知った金のライオンは悔しがり、銀のライオンの根も葉もない悪い噂を流しはじめます。はじめは、金のライオンが何を言っても、誰も信じようとはしませんでしたが、次第に噂は広がり、少しずつ多くの動物たちがその噂を信じるようになります。そして周りが同じ噂を知っているだけで、銀のライオンを疑うものが現われはじめ、ついにはその噂が真実のように扱われるようになっていきます。
 この後、果たしてどちらのライオンがこの国の王様に選ばれたのでしょうか。そして、これからこの王国はどうなってしまうのでしょうか・・・。
 噂が広まり、それが真実のように扱われる状況は、現代のネット社会を生きる私たちの身近でも頻繁に起きています。もちろん一番悪いのは初めに噂を流し始めた人ですが、その噂を無意識に広めてしまった人たちにも罪はあるのではないでしょうか。まさに「考えない、行動しない、という罪」です。

 「嘘は、向こうから巧妙にやってくるが、真実は、自らさがし求めなければ見つけられない」(p.43)

 私がこの絵本の中で、一番印象に残った言葉です。私たちは日々SNSなどで簡単に情報を手にできる一方で、間違った情報を広めてしまう危険性があります。何が嘘で何が本当なのか、自分の目で確かめることの大切さをこの絵本は教えてくれます。 そして、この物語のタイトルになっている「二番目の悪者」とは誰のことなのか、いったい作者は何を伝えたいのか、ぜひ考えながら読んでみて下さい。


 

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