私のオススメ本
第205回 自分らしく生きたい人にオススメ
松江キャンパス 図書館職員 池田理絵
私のオススメ
『コンビニ人間』
村田沙耶香著
文藝春秋 2018年9月発行
この小説は、第155回芥川賞を受賞し、ベストセラーとなった作品です。日本国内だけでなく、海外でも高い評価を受け、多くの言語に翻訳されています。
主人公の古倉恵子は36歳独身、彼氏なし。大学生の頃に始めたコンビニのアルバイトを18年続けています。恵子は幼いころから言動が「普通」の感覚とはずれていて、周囲から奇妙がられる子どもでした。社会に馴染むことができず、家族からどうすれば「治る」のか心配されながら育った恵子。
そんな恵子が社会に適応できる唯一の場所、それがコンビニでのアルバイトでした。周囲の人たちの真似をしたり、マニュアル通りに動くことで、「普通」の人らしく振舞うことができたのです。
ようやく自分の居場所を見つけた恵子でしたが、年齢を重ねるにつれて、結婚や就職を求める周囲の圧力に直面し、自分の生き方について疑問を持ち始めます。 その後、恵子は白羽という男性との出会いをきっかけに、現代社会が求める「普通」(社会の期待)と「自分らしさ」(個人の価値観)との間で葛藤しながら、最終的に自分自身が納得できる生き方を選びます。
私はそんな恵子の姿に勇気をもらい、自分らしく生きるためには、自分のありのままを受け入れること、また「普通」にとらわれず、互いの違いを認め合うことが大切だと強く思いました。
周囲の目を気にしたり、世間の常識や価値観に縛られて自分らしく生きられない、そんな悩みを持つ人にぜひおすすめしたい1冊です。
【バックナンバー】
・第1回~第30回
・第31回~第60回
・第61回~第90回
・第91回~第120回
・第121回~第150回
・第151回~第180回
・第181回~第210回